きみはいい人、チャーリー・ブラウンでハッピーになれた話
3/31、4/9の2回観劇した『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』、とっても良かった。
世界的に有名なコミック『PEANUTS』を題材としたオムニバス形式のミュージカル。
ブロードウェイから始まり、2017年に日本での公演があり、今回はその再演となる。
再演といえど変わらなかったキャストはスヌーピーを演じた中川晃教さんのみで、他は全員新しいキャストへ変更された。
チャーリー・ブラウンを演じるのはハイトーンの歌声が特徴的なDa-iCEのボーカル花村想太さん。
昨年ドラマ『極主婦道』の主題歌「CITRUS」で改めてDa-iCEの楽曲を聴いた身だったので、実際生で花村さんの歌声を聴いた時は「歌がうまい」しか言えなかった。
なんというか、言うのも野暮すぎて……。
一番初めの楽曲である「オープニング」〜「きみはいい人、チャーリーブラウン」はキャスト全員が歌っているのだけれど、花村さんのパートになるとぐっと惹き寄せられる何かがあった。
歌が……うまい……。
お芝居も初めて観たけれど、小学生らしいはつらつとした声音から発せられる哲学的な言葉(「ピーナッツバターサンドを食べている人は孤独」だとかそういうセリフ)をさらっと、子どもらしく言えるというのは案外難しい事だと思う。
『PEANUTS』を幼少期アニメで見ていた時、子どもながら子どものくせに難しい事を言っているなあという感想を持ったことがあった。
だからこそ、これを演劇として大人が演じるなら、そういった哲学を子どもらしく演じるのは難しそうだな、と思っていたから、花村さんはじめ他のキャストがちゃんと子どもらしく(あるいは犬らしく)、素直に演じていたところに感動してしまった。
金色のくるくるふわふわのパーマヘアに濃いめのチークも可愛らしいのが良かった、大人なのに観ているうちにどんどん子どもに見えてくる。
衣装が大人の体のラインにならないよう、ふわっと丸いデザインになっていたのもあるだろうけれど、やはり花村さんの演技力でもってより子どもらしくなっていたのだと思う。
チャーリー・ブラウンの友人のひとり、ライナスを演じたのは我が推し岡宮来夢くん。
もう……あの……すごく素直に言うと、
顔がかわいすぎる!!!!!
童顔だし、インタビューでも「見どころは顔が可愛いところです!」と言っていただけあって、そりゃあ可愛いお顔で出演するんだろうな、と思っていたけれど……。
出てきた瞬間、あ、もうだめだと。素直に。思いました。
あまりにもかわいすぎる、もしかして歳ごまかしてる?成人してない……?(当然だけれど彼はとっくに成人してます)
と、混乱するくらい可愛かったです。
ゲネプロの写真より31日に観た時の方が髪も明るくなっていて、チークも火照ってるくらい乗っていて、ふっくらしてる頬がより可愛らしさを演出していた。
彼を生で観たのは1月の『ミュージカル刀剣乱舞 乱舞音曲祭』(感想書こうとしてだいぶ経ったのでやめました)以来だったのもあり、またその時に演じていた役柄とは全く違うキャラクターなのでちょっとドキドキしていたのだけれど、もう、いい意味で期待を裏切ってくれた。
歌声も変わらず伸びやかだけれど、若干いつもより声高めにしていたようにも思える。
ルーシーの弟ということもあり、主にルーシーとの絡みが多かったのだけれど、本当にかわいかった……。
「ボクの毛布とボク」というライナスメインの楽曲では、安心毛布と楽しくダンスしたり、安心毛布を手放すために必死に葛藤するシーンが印象的で、歌いながらも毛布と見守るみんなの間を行ったり来たりしたり、まるで赤ちゃんを抱くかのように優しく毛布を抱えたりと、コミカルかつ愛らしい演技が最高だった。
もう一つ好きなシーンがある。
ルーシーとライナスのシーン。
ここからより二人の関係性が深まっていったように思う。
ルーシーがシュローダーに「きみはとても怒りっぽい」と言われて始めたアンケートで自分の欠点を知り、それに打ちひしがれるルーシーにライナスが寄り添って、なんでもないように「お姉ちゃんを愛している弟がいる」というセリフ。
ライナス自身は本当になんでもないように言うんだけれど、ルーシーにとっても観客にとっても、すごく重くて優しい言葉だったと思う。
わたしは残念ながら兄弟はいないので分からないけれど、きょうだいがいる人の中で、大好きだけど素直にそう言えない人は多いと思っている。
でもあのセリフを聞いたら、素直にそう言えるのは素晴らしいことだな、自分もそうやって言えたらいいな……と思った。
この後ライナスはルーシーに連れられて意味不明な事を教えられたりするんだけれど、それも今までのシーンよりトゲがなくなったというか、仲良し姉弟らしさがすごく出ていて良かった。
その前のソファでごろごろ毛布にくるまってテレビを見ている姿もかわいかった!
『HAMLET』の時とはまた違う、本当にかわいさに全振りした来夢くんが見られて、オタクはハッピーでした、ありがとう来夢くん……。
そんなライナスのお姉さん、ルーシーを演じたのは宮澤佐江さん。
宮澤佐江さんといえば、わたしの中ではAKB48の人だ、というイメージしかなく、テレビで見ている時も、明るくてリーダーシップのあるひとだなあという印象だった。
ミュージカルに出ている事も知らず、お名前を拝見した時は少し驚いたんだけれど(勉強不足で申し訳ないです)、こんなに歌が上手いんだ!?と驚かされた。
「精神分析」というチャーリーブラウンとルーシーの曲では、子どもらしくビブラートのかかっていない高音をキンとした硬い音ではなく、耳障りの良い声音で歌っていたのがとても印象的だった。
そうそう、ルーシーってこういう子だよね、という頷きをたくさんするような、本当にコミックから出てきたルーシーだった。
怒りっぽいところを如実にするために地団駄を踏んだり、表情をめいっぱい動かして怒りをあらわにしたり、コミカルだけれどちゃんと子どもらしい怒りや、悲しみ、笑いなどを表現していて、もっと他の舞台でも観てみたい。
カーテンコールのダンスが毎回可愛くて、魅せるところが分かってるな……(それはそう)と思った。
チャーリーブラウンの妹、サリーは林愛夏さん。
なんだこの人!?ってなった。
いやもう、ここに5歳児連れてきた!?というくらい、本当に子ども。
最初にチャーリーブラウンの欠点を言うセリフがあるんだけれど、もうその言い方が幼稚園児。
語尾が全く無声化されてないはっきりした喋り方で、抑揚もしっかりついた、子どもが喋るそれにしか聞こえなかった。
かと思えば歌唱でめちゃくちゃ綺麗な裏声でハモったり、それにびっくりしてる間に子どもに戻っていたり……。
スヌーピーと一緒にウサギ狩りに行くシーンでは、冒頭からラッパが鳴らなくて、口で「プーッ!」と言うところが、2回観て2回とも変わっていた。
スヌーピー役中川さんとアドリブを出し合ったとか。エンターテイナーが揃うとこうも世界観を崩さず面白く、生の良さを味わえるんだなあと感動した。
サリー、本当に可愛かったし仕草の一つ一つが幼くてキュートで、こういう子が親戚に居たらめちゃくちゃ可愛がるだろうな……となんだかものすごく庇護欲が湧いた。
シュローダーを演じたのは植原卓也さん。
歌が上手い(全員歌が上手い)……。
「ベートーベン・デー」の歌唱はもう本当に植原さんの歌唱力で殴られたかと思った。すごすぎる。
なんというか、音圧がすごい。肺活量と合わさって脳に響くというか、耳が揺れる感じの歌声。
しかも一番驚いたのは、あの体躯の良さでちゃんと子どもに見えるところ!
31日に観た時はだんだん子どもに見えてきたんだけれど、9日はもう最初から子どもに見えた。
勘違いかもしれないけれど、多分この間に動作の幼さが変わっている気がした。
より子どもっぽくなったように思う。
ピアノを弾いている時は他のことは全く意に返さないのに、ふと気づけば目の前にキス待ちのルーシーが居て慌てて逃げていくところとか、2回目の方がよりアニメで見たシュローダーっぽかった。
植原さんのシュローダーは、幼稚園に居るちょっと大人びた子っぽい。クレヨンしんちゃんで言うところの風間くん的な……。
ザ・エンターテイナーだった。
初演を観てないのもあって、スヌーピーを人が演じるってなんだ……?と思っていたので、実際に観てこうきたか〜!と思わず笑ってしまった。
犬にしか見えない。すごい……。
対子どもたちの時はちゃんと犬の鳴き声なんだけれど、ぽそっという言葉が完全に人間の言葉で笑っちゃう。(バレンタインのカードをもらえなかったチャーリーブラウンに対して「見る?」と言ったり、スヌーピーに高圧的な態度を取るサリーに「こうやって見つめられると人間は嫌なんだって」と言ったりする)
レッドバロンのシーンではものすごい前に見たアニメでの話を思い出して懐かしい〜!と感動した。
必死に戦うスヌーピーの周りをうろちょろ遊んでいる子どもたちが可愛かった。子どもたちの動作に合わせてちょうどレッドバロンが攻撃してきたり、場面が切り替わったりするのも面白かった。
あと、忘れてはいけない「サパータイム」!
念願のエサの時間に盛り上がるシルクハットを被ったスヌーピー、ネオンに輝くステージ、アンサンブル(という名のチャーリーブラウン以外の子どもたち)、そして中川さんの貫禄のある歌唱と「あれ?ここブロードウェイだったっけ?それともロス?」と思ってしまうほどの盛り上がりだった。
推しのラインダンスで感動したのは多分わたしだけだと思う(なんか知らないけどラインダンスが好きなので……)
9日の「Happiness」ではシュローダーとライナスにちょっかいをかけてて可愛かった。
ライナスの安心毛布を摘んでそっと持って行こうとして阻止されてるところなんか、まさに犬がやるいたずらで微笑ましかった。
中川晃教さんといえば本当にミュージカル界のスターだし、まさか観る機会が現れるとは思っていなかったので、こんな形で観られてとても嬉しかった。
そんなわけで2021年、2回目の観劇作品となった『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』。
ラストの「Happiness」があったかくて、それでも終わってしまう寂しさにじんわりと胸が痛んで、なんだかすごく充実した時間を過ごさせてもらえた。
この作品を通して、非日常を味わうとともに、心を温めてもらったような気がする。
著作権の都合により配信、DVD化されないのが本当に惜しい(どうにかなりませんかね……)ので、再演を!再演をしてほしい!
残り一公演、どうか最後まで誰も怪我なく走り切ってほしい。
(展示されていたサイン付きボード。スマイルが可愛すぎる)
観劇のためのかばんの中身の話
例に漏れず、このような時世柄になってから荷物が増えた。
今までは本当にショルダーバッグひとつでどこにでも行っていたな、と部屋を掃除して思い出していたけれど、しばらくはそうもいかないらしい。
突然だけれど、私はカバンの中身を見るのが好きだ。
ファッション誌のそういうコーナーや、Instagram、Twitterで定期的に流行るそれはいつも見ていて楽しいし参考になる。
というわけで、私もその流れに乗ってみようと思った。
これが私のカバンの中身である。
統一性のかけらもないのは昔からだけれど、今はより統一性がない。
順に紹介していく。
・緑のクマのポーチ
→Ankerのモバイルバッテリー入れ。この可愛さに癒される。ずんだ色だと思っている。(ずんだは推しキャラに所縁のあるもののため)
・ティッシュポーチ
→中にミンティア、目薬、頭痛薬、メイク直し用の綿棒、紙石鹸が入っている。ぱんぱん。
・ピンクのポーチ
→カラーコンタクトの替えと目薬(2個目)が入っている。この目薬はこないだのハムレットで、上のティッシュポーチを丸ごと忘れたせいで買った物である。
・オリンパスのポーチ
→オペラグラス。8倍。説明不要。
・エコバッグ
→ポストジェネラルのコンビニエコバッグ。物販用だったり帰りがけに何か買った時のための物。丸められるので便利。
・速攻ブルーベリー、ウェットティッシュ各種、ボールペン
→速攻ブルーベリーはオタク必需品だと思っている。なぜかこの間2列目なのに飲んでしまった。異常にクリアな推しを観られて良かったけれど……。ウェットティッシュは元から持ち歩いていた。流せるタイプはお手洗いで便座を拭くのに使っている。ペンはペンケース持ち歩く必要性を感じなかったのでここに入れた。
⇨この4点、オーダーした推しカプポーチ(サークル主様に了承を取り損ねたので映しておりません)にまとめている。とてもいい。見せられないのが残念。
・メモ帳
→ポール&ジョーで誕生月に買い物したら貰えるノベルティをそのまま使っている。
観劇中にメモを取るというのは個人的に好きじゃないので、終わってからすぐ書く。ただここのところTwitterに垂れ流してしまうので出番は少ない。
まず、チケットホルダーとマスクケースが二つ。
チケットホルダーは推しこと横田龍儀くんのバースデーイベント(2018年だと思う)で購入したものだ。自慢じゃないけれど内側のポケットに彼の直筆サインが入っている。これは通し(1,2部の両部参加したということ)の特典だった。
ここには直近で予定のある舞台のチケットを入れておいてある。
次の現場は電子チケットなので、出番がない事が少し寂しい……、参考に入れたのは前回のハムレット。
マスクケースは刀剣乱舞(DMMのオンラインゲーム)がファミリーマートとコラボした時に手に入れたマルチケースを使っている。
鶴丸(左)には黒のマスクを、物吉(右)には白のマスクをストックとして入れている。
推しと推しがやっているキャラクターなので観劇の時だけは彼らを使っているのだけれど、普段はポムポムプリンのマルチケースで持ち歩いている、オタクはいつだってカモフラージュに余念がない。
Diorの巾着にまとめて詰めている。
この巾着、めちゃくちゃ可愛いうえにサンプルを入れるためだけの物ということで、いつも驚く。
左上から、
・Dior アディクト スクラブ&バーム
→デイリー使いができるスクラブでとても気になっている。薄いピンクで色づきもよいので、マスクで付けてもちょっと気分が上がる。
・Dior アディクト リップ マキシマイザー
→スースーする。上のを使ってからこれを使うこともあるけど、これを使うとマスクにつく(悲しい)。最近出番が減った。
・イプサ ザ・タイムRデイエッセンススティック
→ものすごいリピートしている。たぶん5本めくらい。
小鼻とかCゾーンとか乾燥しやすいところに塗っている。メイクした肌でも使えるのがいい。
・ロクシタン グリーンティ ハンドクリーム
→香りが最強。甘すぎなく柑橘系とグリーンティの爽やかな香りが好きで使っている。限定なのが悲しい……。アールグレイを購入するか検討中。
・uka ネイルオイル 24:45
→職業柄爪周りがものすごくガサガサになるので、ハンドクリームをする前に塗って軽くマッサージするようにしている。
ラベンダーとバニラ、オレンジの香りが穏やかになって気持ちがいい。
右下
・Dior ミスディオール ブルーミングブーケ
→10月にオンラインで買ったらついてきた。普段はオリジナルで調香してもらった香水を持って歩いたり、shiroの練り香水を持ち歩いたりしているけれど、今はこれ。良い女の香りがする。
・Francfranc ミラー
→両面鏡になっている。推しに会う前のチェックにすごく便利。
冒頭で触れたカバンは、今はトートバッグが主に活躍している。
kate spadeのトートかメゾンドフルールの例のトートのどちらかだ。例のトートは年齢的にもうキツいか……と思いつつ、ナイロンの強い生地が気に入っていて使っている。
消毒、マスクと持ち歩くものは増えたけれど、推しに会うため、舞台を観に行くためなら致し方ないとも思う。
これからも安全に観劇をしていきたい。
5 Guys Shakespeare Act1:[HAMLET]を3回観てきた話
11/20,11/23に計3回観劇した。
◇はしゃぎすぎて大千穐楽にとうとうブロマイドを迎えてしまった図
ものすごいスピードで着替え、役がどんどん変わる4人と、たった1人一役のハムレット。
ハムレットだけは岡宮来夢くんがずっと演じていたのだけれど、ほかの4人もそれぞれハマり役があるな、と感じた。(パンフレットにてメイン役という割り振りがあったと知ったのですが、記事を書いた後に知ったためご容赦ください)
立花裕大さんはホレイショー、橋本真一さんはレアティーズ、法月康平さんはオフィーリア(ガートルードと悩む、どちらも素晴らしかった)、中村誠治郎さんはクローディアス。
■立花裕大さん
立花さんのホレイショーは初見から恋に落ちるかと思った。今までハムレットは書籍(福田恆存氏訳)でしか触れたことがなかったので、ホレイショーはなんというか、苦労人のイメージが強かった。
彼のホレイショーは苦労人というより、頼りになるが故に苦労するというか……プロジェクトリーダーみたいなホレイショーだった。
というのも立花さんはミュージカル刀剣乱舞でそれこそりぃだぁと呼ばれている役を演じているので、それを私が被せてしまったような気もする。
それを抜きにしても彼がホレイショーをやるたびに生まれた安心感はすごかった。ほかにボローニアスのお父さん感がすさまじかったのは、やはり彼自体に安心してしまったからかもしれない。
ミュージカル刀剣乱舞では、初の舞台参加ということもあり、はっきり言って他の役者たちに押されていたように観えていたけれど、今回の彼は立派な舞台俳優だった。
(とても偉そうに見えてしまって申し訳ない……)
ガートルードも長身でしっかりした体躯の彼がやるのか!?と驚いたけれど、意外としっくりきていた。橋本さんクローディアスとの掛け合いだったけれど、首筋と鎖骨が色っぽくてどぎまぎしてしまった……
◇大千穐楽を終えての追記
最後の沈黙シーン、あの張り詰めた空気の中での圧巻の存在感。所在なさげなホレイショーを最後まで全うした姿は何度見ても格好良かった。
■橋本真一さん
レアティーズはラストのハムレットとの決闘裁判が凄まじかった。
彼の殺陣は見たことがなかった(彼のイメージはミュージカルテニスの王子様の樹希彦くんだったので)のもあり、その洗練された殺陣と迸る汗の美しさが脳裏に焼きついている。
橋本さんの印象に残っている役で、オフィーリアをあげようかとても悩んだ……
橋本さんのオフィーリアはハムレットとの尼寺のくだりがあり、ハムレットにもう板の上を縦横無尽に振り回されまくっていたのだが、それに食いつきながらハムレットを説得する様はまさに尽くすタイプの女性だった。
ハムレットのためなら貞淑でいる、ハムレットの嫌なことは絶対にしない、だから一緒にいて欲しい。現代で重いと言われる典型的なタイプの女性だけれど、そんな女性をそれはもう存分に再現していたように思う。
この兄妹の演じ分けを即座にできる橋本さんは素晴らしいな……と素直に感動した。
■中村誠治郎さん
公演アンケートに思わず気持ち悪いことを書いてしまったのだけれど、ガートルードとの対話の前に羽織を靡かせて羽織る姿がまさにクローディアス!クールなヴィラン!!で感動してしまった。(ということを書きました……)
ラストの毒で死んでしまうシーンも彼はクローディアスだったのだけれど、いや、もう仕方ないよ……という感じで1ミリも同情できないクローディアスで最高だった。
中村さん、すごい、どこかで観たことが…!?と今の今まで思っていたんだけれどよく考えたらパライソ(ミュージカル刀剣乱舞静かの海のパライソのこと)に出ていらっしゃった、と思い出して唸ってしまった。5Guys……半分以上パライソの出演者……
とにかく存在感がすごかった。もうそれしか言えない……観てない人は円盤を待ってください。
■法月康平さん
私の中ではBLEACHの一護のイメージしかなかったのだけれど、この方の女形はすごすぎる。ガートルードとオフィーリア、二人の女性を見事に演じ分けた素晴らしい役者さん。
橋本さんでオフィーリアを上げなかったのは、彼のオフィーリアがあまりにも"完璧"だったから。
序盤〜ボローニアス死までのオフィーリアの天真爛漫さが少女のそれだった。
意味もなくドレスのスカートをひらひらさせてみたり、兄であるレアティーズに頑固者だと言われた時の『鏡を見たことがなくって?』、ボローニアスがハムレットに会うなの一点張りだった時の『親子そっくり』という二つのセリフが回を重ねるごとにどんどん少女になっていく。
大千穐楽の時の『親子そっくり』なんか『親子そっくり〜』というなじるような、棒読みのような絶妙なニュアンスになっていて、現代の女子高生みたいだった。彼の観察眼がすごい。どこまでもストイックで挑戦的な役者さんだと感じた。
そしてボローニアスの死〜オフィーリアの死までのオフィーリアの狂気とハムレットへの愛の入り混じった芝居は、引き込まれすぎて呼吸を忘れることがしばしばあった。
花言葉で4人(クローディアス、ガートルード、レアティーズ、ハムレット)へ草花を贈る歌があったのだけれど、その歌で突然笑い出したり、本来なら絶対にしないであろう王であるクローディアスに抱きついたり、いきなり真理に近づいたりを見せる様は"悲しい"の一言に尽きる。
愛してやまないハムレットに娼婦だの尼寺へ行けだの言われても彼を信じ続けたのに、彼はイギリスで死んでしまったという事実と、父であるボローニアスの死の二つの死で心を壊した彼女の異様さがよく出ていた。
ハムレットに渡すのはローズマリー。花言葉は変わらぬ愛、私を忘れないで。この場にハムレットはおらず(当然だけどこの場面ではハムレットはイギリスに留学という名の処刑をされに行ったので)、空虚にそれを捧げる姿はいじらしくて悲しかった。
死を衣装を脱ぎ捨てることで表現していたのもあり、オフィーリアの柔らかい白いドレスが地に落ちるシーンは儚くて寂しいものだった。
ものすごく長くなってしまってガートルードの話を書くか悩んだけれど、忘れたくないので書く。
法月さんのガートルードの何が良いって、色気が凄まじかったところがとても……とても良かった。
大千穐楽を前にパンフレットを購入して、帰宅してから読んだのだけれど、やはりご本人も相当この二人の女性をどうするか考えたそうで、その努力の表れ(この言い方でいいのか分からないけれど)が舞台に表現されていたから、この人は本当にすごいなと思った。
ガートルードの襟元がばっさり開いた赤いドレス、ラストの決闘裁判では(服を捨てることで死を表現するため)黒いシャツを着たまま着てらしたのだけれど、それでも隠せない色香が……女として負けた気がする。
ハムレットがガートルードの寝室に呼ばれるシーンで、ハムレットが彼女を組み敷いて剣に光る自分の顔を見せるところがあったんだけれど、その時こちら(これは1階席で観た)からは法月さんの頭と肩、襟元くらいしか観えなくて、そのはだけた骨張る素肌が色っぽかった。そしてそのガートルードの頭を撫でて素肌をなぞるハムレットの手つきがまた色っぽかったな〜……、ハムレットはこの時点で女性への信用を失っているから、わざと官能的な手つきで触ってたのかな、と思うとぞくぞくした。
要約:法月さんの女形は色っぽい(ここだけ読んでもらえれば……)
■岡宮来夢くん
岡宮くん(普段はくるむくんと呼んでるのだけれど、ブログくらいはちゃんと呼びたいので)、ものすごく、ものすごく成長していた。
私が彼を生で観たのは去年のミュージカル刀剣乱舞 歌合乱舞狂乱2019だ。
当時はこんな状況ではなかったので客降りもあったし、運良く通路側の席でばっちり彼からファンサをもらったことがきっかけですごく興味を持つようになった。
この時までは興味だった。彼の演じているキャラクターはものすごく人気のある刀だし、私が推してる刀と旧知の仲なのもあって絡みもそれなりにあって知っていたけれど、可愛い子だなあ、くらいだった。
彼への関心が興味から応援したいに変わったのは、今年3月に公演されたミュージカル刀剣乱舞 静かの海のパライソ だった。
この公演、昨今の状況によりたったの7公演しか上演ができなかった幻の作品なのだけれど(来秋に再演が決まっている)、奇跡的に、本当に奇跡的にそのうちの1公演を観ることができた。
なるべくネタバレは控えたいので深くは話さないけれど、その時の彼は美しくて儚かった。
脱線してしまうのでこの話はまた今度書くとして、その3月に観た彼よりまたグレードアップしていた。
ハムレットというのは最初から最後まで復讐や暗い気持ちを抱えたままの青年だから、柔らかくてふわふわした彼がどう演じるのかとても楽しみだった。
期待以上だった。
彼の力強い歌声は歌合の時から惹き込まれていたけれど、より力強く、表現力も増した歌声になっていた。芝居は役柄が違いすぎて比較するのも憚られつつ、それでも感情の発露がよりはっきりして大きくなっている。
ぜんぜん関係ないけど、この舞台は定期的に水分補給とマウスガードの飛沫を拭く場面があった。(演出としてあったのは水分補給だけ)
その時に上下でしっかりマウスガードを拭き、コップに注いで水を飲む岡宮くんが小動物的かつ育ちの良さが垣間見えて個人的な見どころになっていた。
円盤にも少しは映っているといいなあ。
ハムレットは一回しか衣装チェンジがなかったので、静かにベストのボタンを留めている彼が可愛らしかったのが印象深い。
法月さんのオフィーリアのところで出たローズマリーを撫でていたところも印象に残っている。あの場でローズマリーを拾うというのはメタ的表現だったけれど、そのローズマリーにオフィーリアを重ねていたのかな、と思うと涙が出そうになる。
ハムレットとオフィーリアの愛は本物だったし、撫でるという行為は、これ以上自分といては幸福にならないと突き放した彼女へ本当はしてあげたかった事なのかな……と。
レアティーズとのやりとりでグッと来たのは、オフィーリアへの別れの言伝を頼む時の手つき。
『悪い男に騙されませんように』と言いながら、レアティーズの首筋から胸元まで掌でなぞる手がセクシーで、知ってる岡宮くんじゃない!!と近所のおばさんみたいになってしまった。
ガートルードとのやりとりは書いてしまったので割愛するとして、ラストにガートルードが毒殺されるシーンで母上と叫びながらその亡骸を抱き締める姿は泣きそうになった。信用はなくとも愛情は消えきらず、最後まで母としてハムレットを愛してくれたガートルードを想い駆け寄るところもよかった……。
イギリス行きから親書を奪うシーンも強そうで良かった。『だ、そうだ。ホレイショー!』のセリフのボス感すごい。
ホレイショーとのシーンは本当にホレイショーには心を許している表現がきれいで、明らかに声色も柔らかい。
反対にローゼンクランツとギルデンスターンとの会話は硬い声音。一線引き、壁を張っているのがよく分かる。
この対比がものすごくはっきりしていたのが良かった。
個人的岡宮くんハイライト
・王妃と王子の会話を盗み聞きするねずみ〜というセリフを一個手前の聞き耳を立てていたのか〜というセリフと混ぜてしまい『聞き耳、ねず、きき……』ともにゃもにゃするハムレット(11/20マチネ)
・柱ドン
・ボローニアスの衣装の上でごろごろするハムレット(狂気のシーンだけどかわいい)
・『おやすみなさい、母上』の"え"の伸びやかな歌声
・ハムレットと鑑賞する影絵のコーナー
・両手で杯を包んで毒を飲むハムレット
特別編 大千穐楽
・カーテンコールで話すことがまとまらず手がわちゃわちゃしだす岡宮くん
・4人の言葉に毎回大きな拍手をする岡宮くん
・へへ…って笑い出す岡宮くん(かわいい)
・両手を腿にぺったりつけておじぎする岡宮くん
・手がふにふにそうな岡宮くん
→抱き締めてくる立花さんや法月さん、橋本さんの手が骨張ってて男らしいから尚更際立つもちもち感
・4回目のカーテンコール「さっき(3回目)で話したかったこと全部話したので、話すことが何もないんですが……」という素直な発言
■歌(追記です)
いや、もう、すべての歌が耳に染みついて離れない。
Yu(Vague)さんの音楽が大好きなオタクとしては、今回の舞台音楽はすべて素晴らしかった。
ものすごくニッチな部分だけれど、ハムレットとオフィーリアの尼寺のやりとりの音楽がとても好きで、オフィーリアの『尼寺にはふたつの意味があります。〜』の時に流れていた音楽が、もう、もう最高だった。切なくて美しくて、深い森の中にある大きな湖のような澄んだ音楽だった。
ハムレットと先王の亡霊が復讐せよ、と歌うシーンも音楽と低い歌声がマッチしていて良かった。そこがずっと頭に流れている。
なによりもオープニングから心を掴まれたような気がする。シェイクスピアの文言が入り乱れ、低くも優しい歌声の岡宮くんが4人の歌声にアクセントとして入るこのオープニング。あれを聞く為に大千穐楽のチケットを追加したと言っても過言ではない。(あと法月さんのオフィーリアにもう一度会いたかった……)
Yu(Vague)さんの楽曲の個人的最高峰は舞台『クジラの子らは砂上に歌う』だと思っていたけれど、上位が入れ替わったかもしれない。
早くCDの発売を決定してください。
■まとめ
新型コロナウイルスが流行ってから、そして緊急事態宣言が解除されてから2度目の観劇だった。
今回珍しく席運がよく、2回も2列目センターという好席だったのだけれど、その分フェイスシールドを必ず着用しなければならなかったので反射との戦いだった。
先人たちの知恵を借りてマスクを黒にしたり、日々健康に留意したりしていたけれど、制限がある中でもやはり観劇は楽しかった。
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- 配られたのはマジックテープタイプのシールドだった。前髪が死んだので今度持ち込み可なところがあればこれを買いたい……。最前のお客さんがこれをしてて賢い!と素直に感激した。
5人だけでやるハムレット。松崎さんの舞台はいつだって面白いけれど、今回は特別面白かった。
大好きなYuさんが音楽を作っていたのもあり、この作品に恐ろしいほど没入して、観劇して初めて『終わるな』と思った。
いつもは終わることに対して惜しくは思うけれど、また観られるように頑張ろうとか、円盤を買おうとか思って終わりだったのに、ハムレットはだめだった。終わってほしくない、終わってしまえば日常に戻る。戻りたくない。
私の中で強い中毒性のある作品になってしまった。
次回があるなら、ぜひ四大悲劇を完遂してもらいたいし、2.5に限らずフレッシュな若手俳優をどんどん起用して欲しい。
あわよくば、推しが出て欲しいところだけれど……そして、岡宮くんをまた起用していただけると……。
あと、CDは絶対に発売してほしい。
素晴らしい歌の数々を、音楽をDVDでしか楽しめないのは勿体ない。
5 Guys Shakespeare Act1:[HAMLET]は、非日常を極めた恐ろしく完成された作品だった。
■最後のまとめ
公式がYouTubeにてダイジェスト動画を投稿してくださった。
このダイジェストで、ぜひDVDを予約してくれる方が増えることを祈っている。