きみはいい人、チャーリー・ブラウンでハッピーになれた話
3/31、4/9の2回観劇した『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』、とっても良かった。
世界的に有名なコミック『PEANUTS』を題材としたオムニバス形式のミュージカル。
ブロードウェイから始まり、2017年に日本での公演があり、今回はその再演となる。
再演といえど変わらなかったキャストはスヌーピーを演じた中川晃教さんのみで、他は全員新しいキャストへ変更された。
チャーリー・ブラウンを演じるのはハイトーンの歌声が特徴的なDa-iCEのボーカル花村想太さん。
昨年ドラマ『極主婦道』の主題歌「CITRUS」で改めてDa-iCEの楽曲を聴いた身だったので、実際生で花村さんの歌声を聴いた時は「歌がうまい」しか言えなかった。
なんというか、言うのも野暮すぎて……。
一番初めの楽曲である「オープニング」〜「きみはいい人、チャーリーブラウン」はキャスト全員が歌っているのだけれど、花村さんのパートになるとぐっと惹き寄せられる何かがあった。
歌が……うまい……。
お芝居も初めて観たけれど、小学生らしいはつらつとした声音から発せられる哲学的な言葉(「ピーナッツバターサンドを食べている人は孤独」だとかそういうセリフ)をさらっと、子どもらしく言えるというのは案外難しい事だと思う。
『PEANUTS』を幼少期アニメで見ていた時、子どもながら子どものくせに難しい事を言っているなあという感想を持ったことがあった。
だからこそ、これを演劇として大人が演じるなら、そういった哲学を子どもらしく演じるのは難しそうだな、と思っていたから、花村さんはじめ他のキャストがちゃんと子どもらしく(あるいは犬らしく)、素直に演じていたところに感動してしまった。
金色のくるくるふわふわのパーマヘアに濃いめのチークも可愛らしいのが良かった、大人なのに観ているうちにどんどん子どもに見えてくる。
衣装が大人の体のラインにならないよう、ふわっと丸いデザインになっていたのもあるだろうけれど、やはり花村さんの演技力でもってより子どもらしくなっていたのだと思う。
チャーリー・ブラウンの友人のひとり、ライナスを演じたのは我が推し岡宮来夢くん。
もう……あの……すごく素直に言うと、
顔がかわいすぎる!!!!!
童顔だし、インタビューでも「見どころは顔が可愛いところです!」と言っていただけあって、そりゃあ可愛いお顔で出演するんだろうな、と思っていたけれど……。
出てきた瞬間、あ、もうだめだと。素直に。思いました。
あまりにもかわいすぎる、もしかして歳ごまかしてる?成人してない……?(当然だけれど彼はとっくに成人してます)
と、混乱するくらい可愛かったです。
ゲネプロの写真より31日に観た時の方が髪も明るくなっていて、チークも火照ってるくらい乗っていて、ふっくらしてる頬がより可愛らしさを演出していた。
彼を生で観たのは1月の『ミュージカル刀剣乱舞 乱舞音曲祭』(感想書こうとしてだいぶ経ったのでやめました)以来だったのもあり、またその時に演じていた役柄とは全く違うキャラクターなのでちょっとドキドキしていたのだけれど、もう、いい意味で期待を裏切ってくれた。
歌声も変わらず伸びやかだけれど、若干いつもより声高めにしていたようにも思える。
ルーシーの弟ということもあり、主にルーシーとの絡みが多かったのだけれど、本当にかわいかった……。
「ボクの毛布とボク」というライナスメインの楽曲では、安心毛布と楽しくダンスしたり、安心毛布を手放すために必死に葛藤するシーンが印象的で、歌いながらも毛布と見守るみんなの間を行ったり来たりしたり、まるで赤ちゃんを抱くかのように優しく毛布を抱えたりと、コミカルかつ愛らしい演技が最高だった。
もう一つ好きなシーンがある。
ルーシーとライナスのシーン。
ここからより二人の関係性が深まっていったように思う。
ルーシーがシュローダーに「きみはとても怒りっぽい」と言われて始めたアンケートで自分の欠点を知り、それに打ちひしがれるルーシーにライナスが寄り添って、なんでもないように「お姉ちゃんを愛している弟がいる」というセリフ。
ライナス自身は本当になんでもないように言うんだけれど、ルーシーにとっても観客にとっても、すごく重くて優しい言葉だったと思う。
わたしは残念ながら兄弟はいないので分からないけれど、きょうだいがいる人の中で、大好きだけど素直にそう言えない人は多いと思っている。
でもあのセリフを聞いたら、素直にそう言えるのは素晴らしいことだな、自分もそうやって言えたらいいな……と思った。
この後ライナスはルーシーに連れられて意味不明な事を教えられたりするんだけれど、それも今までのシーンよりトゲがなくなったというか、仲良し姉弟らしさがすごく出ていて良かった。
その前のソファでごろごろ毛布にくるまってテレビを見ている姿もかわいかった!
『HAMLET』の時とはまた違う、本当にかわいさに全振りした来夢くんが見られて、オタクはハッピーでした、ありがとう来夢くん……。
そんなライナスのお姉さん、ルーシーを演じたのは宮澤佐江さん。
宮澤佐江さんといえば、わたしの中ではAKB48の人だ、というイメージしかなく、テレビで見ている時も、明るくてリーダーシップのあるひとだなあという印象だった。
ミュージカルに出ている事も知らず、お名前を拝見した時は少し驚いたんだけれど(勉強不足で申し訳ないです)、こんなに歌が上手いんだ!?と驚かされた。
「精神分析」というチャーリーブラウンとルーシーの曲では、子どもらしくビブラートのかかっていない高音をキンとした硬い音ではなく、耳障りの良い声音で歌っていたのがとても印象的だった。
そうそう、ルーシーってこういう子だよね、という頷きをたくさんするような、本当にコミックから出てきたルーシーだった。
怒りっぽいところを如実にするために地団駄を踏んだり、表情をめいっぱい動かして怒りをあらわにしたり、コミカルだけれどちゃんと子どもらしい怒りや、悲しみ、笑いなどを表現していて、もっと他の舞台でも観てみたい。
カーテンコールのダンスが毎回可愛くて、魅せるところが分かってるな……(それはそう)と思った。
チャーリーブラウンの妹、サリーは林愛夏さん。
なんだこの人!?ってなった。
いやもう、ここに5歳児連れてきた!?というくらい、本当に子ども。
最初にチャーリーブラウンの欠点を言うセリフがあるんだけれど、もうその言い方が幼稚園児。
語尾が全く無声化されてないはっきりした喋り方で、抑揚もしっかりついた、子どもが喋るそれにしか聞こえなかった。
かと思えば歌唱でめちゃくちゃ綺麗な裏声でハモったり、それにびっくりしてる間に子どもに戻っていたり……。
スヌーピーと一緒にウサギ狩りに行くシーンでは、冒頭からラッパが鳴らなくて、口で「プーッ!」と言うところが、2回観て2回とも変わっていた。
スヌーピー役中川さんとアドリブを出し合ったとか。エンターテイナーが揃うとこうも世界観を崩さず面白く、生の良さを味わえるんだなあと感動した。
サリー、本当に可愛かったし仕草の一つ一つが幼くてキュートで、こういう子が親戚に居たらめちゃくちゃ可愛がるだろうな……となんだかものすごく庇護欲が湧いた。
シュローダーを演じたのは植原卓也さん。
歌が上手い(全員歌が上手い)……。
「ベートーベン・デー」の歌唱はもう本当に植原さんの歌唱力で殴られたかと思った。すごすぎる。
なんというか、音圧がすごい。肺活量と合わさって脳に響くというか、耳が揺れる感じの歌声。
しかも一番驚いたのは、あの体躯の良さでちゃんと子どもに見えるところ!
31日に観た時はだんだん子どもに見えてきたんだけれど、9日はもう最初から子どもに見えた。
勘違いかもしれないけれど、多分この間に動作の幼さが変わっている気がした。
より子どもっぽくなったように思う。
ピアノを弾いている時は他のことは全く意に返さないのに、ふと気づけば目の前にキス待ちのルーシーが居て慌てて逃げていくところとか、2回目の方がよりアニメで見たシュローダーっぽかった。
植原さんのシュローダーは、幼稚園に居るちょっと大人びた子っぽい。クレヨンしんちゃんで言うところの風間くん的な……。
ザ・エンターテイナーだった。
初演を観てないのもあって、スヌーピーを人が演じるってなんだ……?と思っていたので、実際に観てこうきたか〜!と思わず笑ってしまった。
犬にしか見えない。すごい……。
対子どもたちの時はちゃんと犬の鳴き声なんだけれど、ぽそっという言葉が完全に人間の言葉で笑っちゃう。(バレンタインのカードをもらえなかったチャーリーブラウンに対して「見る?」と言ったり、スヌーピーに高圧的な態度を取るサリーに「こうやって見つめられると人間は嫌なんだって」と言ったりする)
レッドバロンのシーンではものすごい前に見たアニメでの話を思い出して懐かしい〜!と感動した。
必死に戦うスヌーピーの周りをうろちょろ遊んでいる子どもたちが可愛かった。子どもたちの動作に合わせてちょうどレッドバロンが攻撃してきたり、場面が切り替わったりするのも面白かった。
あと、忘れてはいけない「サパータイム」!
念願のエサの時間に盛り上がるシルクハットを被ったスヌーピー、ネオンに輝くステージ、アンサンブル(という名のチャーリーブラウン以外の子どもたち)、そして中川さんの貫禄のある歌唱と「あれ?ここブロードウェイだったっけ?それともロス?」と思ってしまうほどの盛り上がりだった。
推しのラインダンスで感動したのは多分わたしだけだと思う(なんか知らないけどラインダンスが好きなので……)
9日の「Happiness」ではシュローダーとライナスにちょっかいをかけてて可愛かった。
ライナスの安心毛布を摘んでそっと持って行こうとして阻止されてるところなんか、まさに犬がやるいたずらで微笑ましかった。
中川晃教さんといえば本当にミュージカル界のスターだし、まさか観る機会が現れるとは思っていなかったので、こんな形で観られてとても嬉しかった。
そんなわけで2021年、2回目の観劇作品となった『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』。
ラストの「Happiness」があったかくて、それでも終わってしまう寂しさにじんわりと胸が痛んで、なんだかすごく充実した時間を過ごさせてもらえた。
この作品を通して、非日常を味わうとともに、心を温めてもらったような気がする。
著作権の都合により配信、DVD化されないのが本当に惜しい(どうにかなりませんかね……)ので、再演を!再演をしてほしい!
残り一公演、どうか最後まで誰も怪我なく走り切ってほしい。
(展示されていたサイン付きボード。スマイルが可愛すぎる)